<日本の「軽」は不合理・廃止を…米自動車大手> /読売新聞 1月14日
米通商代表部(USTR)は13日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に日本が参加することに対する意見公募を締め切った。
米自動車大手3社(ビッグスリー)で組織する米自動車政策会議(AAPC)は、日本の自動車市場の閉鎖性を理由に「現時点では反対」と表明し、参入障壁となっている軽自動車規格については、「廃止すべきだ」と主張した。
今年秋の大統領選を控え、大きな雇用を生んでいるビッグスリーの政治に対する影響力は大きい。月内にも始まるとみられる日米の事前協議で自動車分野は大きな焦点で、交渉は難航が予想される。
AAPCは、日本独自の軽自動車規格について、「市場の30%を占めているが、もはや合理的な政策ではない」と批判した。日本の技術基準や、認証制度などの規制も参入の障害になっており、透明性が必要としている。1990年代後半からの日本政府の円安誘導政策も、米国車に不利になっていると指摘した。
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<前書>
かつて「ジャパン アズ ナンバーワン」と呼ばれ、バブル華やかなりし頃、対米貿易黒字があまりにも大きくなり政治問題化しました。
そして、日米貿易不均衡解消・スーパー301条回避の為に、自動車貿易の非関税障壁とされた「3ナンバー規制」は、ロクな検証もなく、対米配慮の為に撤廃されました。
しかし、「3ナンバー」規制の撤廃という戦後の日本の自動車行政における最大の政策変更は、その後「交通事故の大幅な増加」という「国民の生命・安全の多大な犠牲を伴っていたことが明らかになりました。
私は、基本的に規制緩和支持者ですが、「3ナンバー規制の撤廃」と「派遣労働の自由化」の二つの規制緩和だけは、やってはならない規制緩和であったと考えています。
今回、TPPでは「日本の「軽」は不合理・廃止を・・・」と米国自動車業界は、要求してきています。
(米国の自動車業界の本音としては当然でしょう。)
本当に、日米構造協議の頃のデジャブですね。
国民もしっかりと成り行きを見守り、正しい選択をしないと、「3ナンバー規制撤廃」のように多大な犠牲を払うことになります。
そこで、そもそも「3ナンバー規制の撤廃」が、その後どんな影響を及ぼし、いかに危険な政策であったかを知っておいていただきたいと思います。
<本編:日本の交通事故の実情を正しく知ろう!①>
このブログでは、何度も取り上げてきましたが、1989年に3ナンバー車の自動車税の税率が大幅に下げられ、いわゆる「3ナンバー規制」が撤廃されて、はや20年以上たちました。
もはや、3ナンバー車も当り前の存在となり、「3ナンバー車は危険!」といっても
・「乗る人の腕の問題だ、俺は運転ウマイから・・・」
・「3ナンバー車買えないヒガミだろ・・・」
・「車幅が100mm200mm変わろうが・・・車重が増えようが・・・、たいして変らんよ・・・」
・「同じ値段なら大きい方が得でしょ・・・」
・「3ナンバー車の方が車体がデカイので、安全に決まっているでしょ・・・」
~と考える人がほとんどになってしまいました。
個人レベルのミクロ視点では、このレベルの考え方になってしまうのは、致し方ないと思います・・・
そして、このような考えが広まったのは、3ナンバー規制撤廃後、自動車メーカー・国交省・警察庁といった関係者が、この3ナンバー規制撤廃の危険性を隠すべく、そのマイナス面が表出しないように、広報してきた成果とも言えます。
マスコミも、自動車業界という最大の広告スポンサーには、収入減を恐れ、何も言いません…。
しかし、マクロ視点で見るときには「3ナンバー規制」の撤廃という愚策について忘れてはいけないでしょう。
だからこそ、3ナンバー車規制撤廃という愚策の本質的な危険性を、これからも取り上げていかなくてはと思います。
そもそも、なぜ「3ナンバー規制」は撤廃されたのか?
「3ナンバー車が安全だから・・・」
「世界基準だから・・・」
~イエイエ、当時はバブル絶好調、ジャパンアズナンバーワンの時代。
米国の対日貿易赤字は、巨額に上り、日米構造協議などが行われ、日米自動車摩擦・貿易不均衡の解消のため、
米国が北米市場向けに生産する車をそのまま日本市場で販売できるように、本来「国民の生命安全」のために設けられていた「3ナンバー規制」が撤廃されたのでした。
この政策は、個人的には戦後の愚政の中でも一、二を争うものだと思っています。
なんといっても「国民の生命・安全」を犠牲に、「アメリカの自動車業界の利益」を図った政策でしたから。
アメリカ迎合政治・外交の最たるものでした。
それでは、なぜ「3ナンバー規制撤廃」が危険な政策だったのか?見ていきましょう。
まずは、そもそも日本の道路状況は、どんなものなのか。
これを知らなければ、そもそも議論になりません。
★そもそも日本の道路は、幅員が異常に狭い! 日本の道路面積(≒幅員)は、米国の半分以下。
アメリカへ行ったことある方ならご存知のとおり、米国ではごく普通の住宅街でも、日本なら「国道?」と思うような道路に面しているのが普通です。
そして、ちょっとした幹線道なら片側3車線。高速道にいたっては片側6車線有りますから・・・
一方、日本ときたら、建築基準法でも住宅は、4mの幅員の道路に接道していれば良いという有様。
その上、建築基準法の施行から50年以上経過しましたが、建築基準法制定当時、既成市街地に認められた2項道路という4メートル未満の道路が、今なお多数残っています。
あなたの家の前面道路も、そんな道路ではありませんか?
建替えの場合に後退する義務はあっても、道路を築造する義務はないため、結局いつまでも道路は、広がらないままですから・・・。
なんのことやら?実感わかない方は、多摩ニュータウンや港北ニュータウンを、実際見てくれば分かります。
日本で数少ない大規模な都市計画により街づくりされていますので・・・多摩ニュータウンや港北ニュータウンのような道路整備状況で、ようやく北米まではいきませんが、欧州並みの道路水準です。
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新道路整備五箇年計画策定の背景/国土交通省HP
★日本の道路は、幅員が狭いうえ、電柱が立ったまま! 道路幅員が、際立って狭い(欧米の2分の1以下程度)のだから、日本こそ率先して、道路上の障害物である「電柱」を地中化すれば良さそうなものだが…
これまた、電線類地中化率が恥ずかしくなるくらい低いときている。
そうでなくても狭い道路を電柱をよけて車が走行しなくてはいけない危険さよ…
↓
★ここまでのまとめ!考えてみてください。
二項道路ではなく、建築基準法は立派に満たしていたとしても・・・4mの道路。
そして、道路脇には電柱が立っています。
そこに歩行者が歩いていたら…車幅1.8m(ドアミラー含めれば2m超)の北米市場向けの3ナンバー車では、安全な側方間隔を到底とれません。
そのうえ対向車など走ってきたら…危険極まりない。
※そもそも、建築基準法の接道義務も含め、日本の自動車・道路の基本骨格は、終戦後の復興に伴い想定されました。
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(ウィキペディアより)
1954年9月、「道路交通取締法」が改正され、全長×全幅×全高(mm)=3,000×1,300×2,000、2ストローク、4ストロークエンジンともに排気量360cc以下と統一され[1]、この新規格に沿って開発された日本初の本格的軽自動車として、1955年10月、鈴木自動車工業がドイツのロイドを手本に、スズライトSFを発売している。
そして、1955年5月18日、通産省(現経済産業省)の「国民車育成要綱案(国民車構想)」が当時の新聞等で伝えられた[2]。同構想では一定の要件を満たす自動車の開発に成功すれば、国がその製造と販売を支援するという物である。要件は以下のとおりである。
4名が搭乗した状態で時速100kmが出せる(ただし、定員のうち2名は、子供でもよい)
時速60kmで走行した場合、1リッターのガソリンで30kmは走れる
月産3,000台(構造が複雑ではなく、生産しやすいこと)
工場原価15万円/販売価格25万円以下
排気量350 - 500cc
走行距離が10万km以上となっても、大きな修理を必要としないこと
1958年秋には生産開始できること
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高度経済成長など予想もつかない終戦後の復興期(1950年代)の話ですから、さも有りなん。
「スバル360位の大きさの車が、広く国民にいきわたるような社会になれば・・・」
その当時では、それさえ夢のような想定だったのですから…。
そして、このような想定を前提にすれば、建築基準法の住宅の接道義務が、4mであることもむべなるかなでしょう。
しかし、その後日本は、そんな想定を遥かに超えて、奇跡の高度成長を果たし、それにつれ自動車もドンドン大型化していきました。
その最後の歯止めが、3ナンバー規制であったわけです。
事実上、乗用車は車幅1700mm以下の5ナンバー車に抑えることは、日本の道路事情を考えれば当然でした。
実際、5ナンバーの車幅1700mmの設定自体、設定当初「いくらなんでも、現在(1950年代)1400mmに満たない大衆車がそこまで大きくなることはないだろう・・・」というバッファを見た最大値としての想定であったことは想像に難くない。
それが、
大衆車の大きさが枠一杯の1700mmになってしまったこと自体・・・日本の道路状況を考えれば、既に想定(1400mm程度)を遥かに超えた完全にキャパオーバー状態でした。
残念ながら、経済は奇跡的に高度成長し、自動車も飛躍的に大きくなり5ナンバー枠一杯にまで大型化しましたが、道路はというと、現在に至るまで、建築基準法の接道義務も4mのまま改正も行われないままです。
4m以下の2項道路を4mにすることすら、いまだ達成のメドも立たない状態です。
本来、3ナンバー規制を撤廃するのであれば、当然国民の生命安全を考えれば、建築基準法の基準も変更し、道路幅員も3ナンバー規格の発祥である米国に遜色ない水準まで、飛躍的に(倍増)拡幅する必要があったでしょう。
北米基準で作られる3ナンバー車は、意味なくデカイのではありません。
日本の倍以上の道路幅員が確保される北米の道路インフラがあってこそ、ジャストサイズなのです。
(コラム:危険性を増したミラーの保安基準変更の愚)
3ナンバー規制撤廃前は、自動車のミラーは、保安基準でフェンダーミラーとされていました。
そしてフェンダーミラーはドライバーの視線移動が少ないうえに、車体からのはみ出しも、ドアミラーに比し極めて少なく特に対人事故に際しては、安全性が高いものでした。
しかし、3ナンバー規制撤廃によりドアミラー中心であった対米配慮により、ミラーの保安基準が変更され、ドアミラーも認められるようになりました。
3ナンバー規制撤廃だけでも車幅が増える上に、ドアミラーの張り出しを考えると、走行時には、3ナンバー車は事実上車幅2mを超えることと同じことであり、3ナンバー規制撤廃とミラーの保安基準変更が相まって、道路交通の危険性が増大しました。
(つづく)



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- 2012/07/29(日) 00:00:24|
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