
FP資格に関心ある方ならご存知かもしれませんが、従来3級FP技能検定は、社団法人金融財政事情研究会という団体のみが試験を実施してきました。
しかし、平成22年2月1日に厚生労働省令が改正され、平成23年1月実施の試験より、日本FP協会も試験を実施するようになりました。
そして、その試験結果が3月になり発表されましたが・・・
あまりにもハチャメチャな結果で、驚きを禁じ得ませんね。
そもそも同一の国家資格を複数の団体で試験を実施すること自体、考えさせられる面があるのに・・・
それぞれの試験実施団体の試験結果は以下の通りでした。
************************************************************
※日本FP協会
<平成23年1月実施3級FP技能検定 (資産設計提案業務) 試験結果について>
受検者数と合格率、試験結果について
【試験結果】
学科・実技 受検申請者数 受検者数 (イ) 合格者数 (ロ) 合格率 (ロ)/(イ)
学科試験 8,268 6,194 5,231 84.45%
実技試験 8,196 6,082 5,986 98.42%
(資産設計提案業務)
************************************************************
※社団法人 金融財政事情研究会
等級 学科
実技 試験科目 受検申請者数 受検者数(A) 合格者数(B) 合格率(B/A)
3級 学科 - 68,375 53,039 38,022 71.68%
実技 個人資産
相談業務 40,408 33,384 11,826 35.42%
保険顧客
資産相談業務 32,224 23,332 11,250 48.21%
計 72,632 56,716 23,076 40.68%
************************************************************

ちなみに、FP技能士試験では、学科試験は、各試験団体にかかわらず共通問題。
実技試験は、各科目により違う問題となります。
上記の結果を見て、そもそも同一問題である「学科試験」の合格率が・・・
・日本FP協会 84.45%
・金融財政事情研究会 71.68%
と試験実施団体が違うだけで、約13%も違っている。
そもそも同じ国家資格“3級FP技能検定”を受けようとする人の素養が、試験団体が違うだけで、大きく変わることは想定できないと思えますが・・・
常識的に考えて同一の試験内容で、ここまで合格率が違うのは、統計的にも有意としか思えません。
偶然とは言い難いのではないかと個人的には感じますね。
このままでは、あまりにも不信感が増幅しますので・・・学科試験は、共通問題なのですから、各試験実施団体の学科試験の受検者の平均点や得点分布は、公表すべきでしょうね。
それにも増して、学科試験以上にヒドイのが、実技試験の結果でしょう。
-------------------------------------------------
・日本FP協会の科目
資産設計提案業務 98.42%
-------------------------------------------------
・金融財政事情研究会の科目
個人資産相談業務 35.42%
保険顧客資産相談業務 48.21%
-------------------------------------------------
ここまであからさまに合格率が違うと、もはやとても同じ3級FP技能検定という国家資格の科目の違いとは思えない状況では?
試験団体が違うとはいえ、同じ3級FP技能検定という国家試験のあり様として如何なものなのでしょう。
日本FP協会の科目「資産設計提案業務」の合格率は、98.42%・・・金融財政事情研究会の実施する他の科目の2倍以上の合格率であり、ほとんど全員合格と言っても良い結果でしょう。
実際、「うっかり回答欄を間違えてずれて記入しちゃった」とか、「名前書き忘れた」とか、「当日体調悪くて試験に集中できなかった」・・・といった人以外全員合格にしたのか?とさえ思えてしまうような結果と言えるのではないでしょうか?
このような結果であれば、学科試験だけで「資産設計提案業務」科目も合格にしても良いという話でしょうね・・・「学科試験」を受かった人なら、ほぼ合格できるような科目なのですから。
98%も合格するのでは、あえてこの試験科目自体が、必要であったか疑わしいと言える水準です。
(残念ながら普通の人の感覚としては「学科試験だけで良いのだが、実技試験もやった方が受検料収入増えるからやっているのか・・・?」としか思えない水準です。)
こんなに科目間で合格率に差異が生じるようであれば、常識的には、何らかの調整があってしかるべきかと思いますね。
3級FP技能検定という左程知名度もない国家資格ですから、あまり衆目に触れず難を逃れていますが・・・
もしも大学センター試験のような一般の国民の関心の高い試験で、こんなに科目間で差異があれば、あまりにも不公平で社会的にも許容されず、科目間調整がなされるでしょうね。
いくら試験団体が違うとはいえ、ここまで支離滅裂な試験結果の状態では、3級FP技能検定という国家資格の信頼性にも影響を及ぼしかねないでしょう。
所管官庁である厚生労働省も、少しはまじめに試験結果を精査し、所轄官庁として今回の科目間の合格率格差について、国民に合理的な説明責任を果たさねばならないレベルだと思えます。
このよう支離滅裂な試験結果が、本当にたまたま偶然なのか?
同じ国家試験ではあるが、FP協会の受検者だけがすごく優秀であるのであれば、そのような受検者分布になる合理的な理由は?
何らかの思惑があるのか?
実技試験問題の難易度が適正ではないのではないか?・・・
今回のケースを、このまま何ら合理的な説明もないまま放置した場合、ごく素直に一般国民の目線で考えれば・・・
「後発の試験団体は、実績もないため、今後の受検者の獲得を考慮し、自団体の合格率を意図的に高くしている。」といった印象を与えてしまうことは否めないでしょう。
このような不公正な科目間格差が存する状態では、ごく普通の人が「3級FP技能検定という資格を受験しよう」とする場合・・・
他の科目の倍以上の合格率、それも「98%」という大半の受験者が合格するような科目があれば、「どうせなら、この科目で受検しよう!」と思ってしまうのが人情というものでしょう。
試験団体もボランティアではないでしょうから、受検料を稼ぐことも重要とは思いますが・・・
今回の3級FP技能検定のあまりにも露骨でズサンすぎる試験結果は、何の対処もせず、放置しておけるレベルではないと考えられます。
同一の国家資格である以上、その「国家資格の信頼性の維持」や「受検者に対する公平性」を考えれば、試験実施団体間や科目間で許容される合格率の格差には許容限度があるでしょう。
許容限度を超える、あまりにも著しい不公平な格差は、その原因を精査すると同時に是正すべきでしょう。
それができないのであれば、2団体による試験実施という異形な試験実施を止めることも視野に入れる段階が来ていると思います。
もともと両団体が試験を実施している2級FP技能検定においても、FP協会における試験合格率が非常に高い傾向にあることが常態化していることについても、それが他団体より高い合格率であることにより受検者を誘因しようとしているためではないことの適切なアカウンタビリティを所轄官庁が求めねばいけない時期に来ているのではないかと思いますね。
このままでは、FP技能士という国家資格、ひいてはFPというものの信頼に関わりかねないと危惧されると言わざる負えないでしょうね。
(参考①)2級も似たような状況ですね・・・あまりにも不合理に合格率が違うので、共通問題であるFP2級学科試験は、各団体の受検者の平均点や得点分布の公開は必須でしょうね。
↓
<平成23年1月実施2級FP技能検定 試験結果>
************************************************************
※日本FP協会
<平成23年1月実施2級FP技能検定 (資産設計提案業務) 試験結果について>
受検者数と合格率、試験結果について
【試験結果】
学科・実技 受検申請者数 受検者数 (イ) 合格者数 (ロ) 合格率 (ロ)/(イ)
学科試験 17,196 13,577 4,838 35.63%
実技試験 18,059 14,188 9,838 69.34%
(資産設計提案業務)
************************************************************
※社団法人 金融財政事情研究会
等級 学科
実技 試験科目 受検申請者数 受検者数(A) 合格者数(B) 合格率(B/A)
2級 学科 - 58,479 43,841 9,397 21.43%
実技
個人資産
相談業務 32,015 23,924 5,987 25.02%
中小事業主
資産相談業務 4,149 2,966 913 30.78%
生保顧客
資産相談業務 17,990 12,224 4,227 34.57%
計 54,154 39,114 11,127 28.44%
************************************************************
(参考②)FP1級試験に関して、
・FP協会においては、1級FP技能士という国家資格の学科試験を事実上CFPという民間資格の試験で流用する形を取っています。
そしてそのCFP試験は、他の1級学科試験と違い、科目別合格という非常に受かりやすく、かつ受検料収入は、科目毎なのでがっぽり儲かるシステム・・・
同じ1級FP技能士という国家資格の受験条件として、試験実施団体が違うとは言うものの・・・
ここまで相違があるのは、如何なものなのだろうか。
その上、FP協会のFP1級実技試験ときたら、合格率96.2%!
FP3級同様やらなくていいと思える位に、合格率が高いときてます。
↓
<平成23年1月実施1級FP技能検定 試験結果>
※社団法人 金融財政事情研究会
等級 学科 受検申請者数 受検者数(A) 合格者数(B) 合格率(B/A)
1級 学科 8,566 5,266 394 7.48%
※日本FP協会(※注:FP協会においては、CFP試験合格をもって1級FP学科試験合格とされるので、事実上CFP試験=FP1級学科試験)
・平成22年度 第2回CFP®資格審査試験
課目名 受験者数 合格者数 合格率
金融資産運用設計 2,536名 973名 38.36%
不動産運用設計 2,028名 772名 38.06%
ライフプランニング・リタイアメントプランニング
2,437名 931名 38.20%
リスクと保険 2,523名 922名 36.54%
タックスプランニング 2,147名 786名 36.60%
相続・事業承継設計 2,122名 819名 38.59%
(6課目全課目一括の受験者数は280名で、25名(合格率8.9%))
<平成22年9月実施1級FP技能検定 試験結果>
************************************************************
※日本FP協会
平成22年9月実施1級FP技能検定実技試験 (資産設計提案業務)
受検申請者数 受検者数 (イ) 合格者数 (ロ) 合格率 (ロ)/(イ)
667 655 630 96.2%
************************************************************
※社団法人 金融財政事情研究会
実技 試験科目 受検申請者数 受検者数(A) 合格者数(B) 合格率(B/A)
1級
実技 資産相談業務 538 512 414 80.86%
************************************************************

FPがせっかく国家資格化して以来、民間資格が残っていたり、2団体が試験を実施したりと、どうも不透明感が否めません。(FP協会の行く手には、常にどす黒いモヤが立ち込めているように思えてしょうがないですね!)
その影響もあり「FP」そのものへの不透明感も高じています・・・他の資格で、「その資格者にだまくらかされないように!」と三大紙に注意喚起される資格なんて聞いたことありません。
普通は、「ニセ○×士に注意」「資格者じゃない者に騙されないように…」といった注意喚起がされるものです。
このままでいいのFP!個人的には、非常に憂慮しています。
↓********************(
朝日新聞 より)*******************
「ファイナンシャルプランナー 資格なぜか二本立て」
~行革の流れで「国家」参入「民間」劣勢に~

家計や資産運用について専門家の立場からアドバイスしてくれる「ファイナンシャルプランナー」(FP)は頼りになる存在だ。所得が伸びず、年金への不安が募り、超低金利が続く中で、その役割はさらに高まると期待されている。でも、業界事情を調べてみると、資格が「国家」と「民間」の二本立てになっていたり、中立のはずなのに特定の金融商品を薦められるケースがあったりするなど、課題もある。(小山田研慈)
今月6日、東京地裁で小柄な初老の男に有罪判決が言い渡された。NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(FP協会、加藤寛理事長)の元幹部による背任事件だ。検察は公判の中で、協会の金3400万円を懐に入れていたと指摘した。
4年前には、財務省出身の元衆院議員の政治資金規正法違反事件に絡んで協会幹部が事情聴取された。事件と直接関係はなかったが、元議員のパーティー券を購入したり、イギリスの国際会議に招待したりするなどしていた。
こうした問題に、事情を知る関係者は協会の「弱さ」を指摘する。「組織が脆弱(ぜいじゃく)で、チェックが利かない。業界の地位を上げたい悲願があり、いろいろ無理もあった」
FP協会の歩みは平らではない。米国で普及していたFPを日本に導入しようと87年に金融機関や経済雑誌の有志らが設立。民間資格の「AFP」「CFP」を広めてきた。しかし、「ファイナンシャル・プランニング技能士」という国家資格が02年度にでき、事情が大きく変わった。
財務省など所管の社団法人金融財政事情研究会(金財)の金融業務の資格が行革の流れで廃止となり、関係省庁などとの調整の結果、代わりに新設されたのがFP技能士だった。FP協会内には「国家資格ができたら、そちらに流れてしまう」との反発もあったが、最終的には「置いていかれるより乗った方がいい」(関係者)と賛同。自前の資格を運営する一方で、国家資格の試験実施機関になった。
予想通り、「国家」のブランドは強かった。06年度までの5年間で取得者は約43万人と「民間」の約3倍に。世界19カ国・地域で使われている、いわば本家の民間資格は国内では劣勢だ。
FP協会は案内パンフで、国家資格と違って更新が必要と、質の高さを強調する。
■受験者も利用者も「?」
実は、国家資格と民間資格は相互に乗り入れしている。国家2級と民間のAFPは試験が共通で、国家1級と民間CFPは同格扱い。初歩の3級は国家資格のみ。共存させるためにできた体系だ。
「なぜこんな仕組みになっているのかいまだに理解できない」。5月に試験を受けた東京都江東区の川口博史さん(37)は首をかしげる。ネット検索でたまたま見つけた国家資格を受験。試験前夜に民間資格の存在を知った。
資格受験学校「TAC」(東京)では受講生のほとんどが二つの資格の違いがわからず、説明を求めてくる。FP講座担当の児玉晋さん(37)は「一本化した方が知名度が上がるのでは」と話す。
都内のベテランFPは、顧客から「国家資格と民間資格とどちらが信用できるの?」とよく聞かれる。「まあ一緒です」と答えるという。このFPは両方の資格を持つ。民間資格を持つ人の多くは「保険」として国家資格も取るケースが多いようだ。
複雑な資格制度とは別に、FPの中立性をめぐる問題点もこのところクローズアップされてきた。国民生活センターによると、FPを含む金融コンサルティングに関する相談件数は00年度は133件だったが、06年度は253件に増えている。
「FPに相談したら、特定の会社の火災保険をしつこく薦められ、不審に思った」という相談もあった。また、ある女性は、数千万円の貯金があるのに「FPの資格を持つメガバンクの行員から、老後はあと1億円必要と自社の変額年金保険を薦められた」。
FPはもともと金融機関向けの資格。営業のために資格をとる場合が多く、どうしても自社の商品を薦めがちになる。一方、独立系のFPもまだ認知度が低く、十分な収入を得ている人は多くない。顧客に最も適した保険より、自分に入る手数料が高い保険を薦めてしまうと漏らすFPもいるという。
■とりまとめ役不在
「生活設計塾クルー」の代表で業界最長のキャリアを持つFP野田真さん(58)は「消費者からすれば資格制度は一つのほうがわかりやすい」。中立性については「人のお金を扱う仕事であり、問題があった時は罰則を伴う法的整備も必要ではないか」と話す。「家計の見直し相談センター」代表のFP藤川太さん(38)も「FPと金融機関との関係をお客さんがすぐわかるような仕組み、情報公開が必要だ」と提案する。金融審議会(首相の諮問機関)の中でも、FPを登録制にすべきだとの意見が出ている。
しかし、業界全体のまとめ役がおらず、こうした課題に取り組む動きはみられない。
金融財政事情研究会は受験者全体の7割強を引き受けている。FPの資格検定の収入が05年度に10億円を超え、全収入の3分の1になった。しかし「うちはあくまで試験機関というだけ」との姿勢だ。FP協会も制度全体には言及できない。国家資格の所管は厚生労働省だが、「労働者の知識を証明する資格であり、消費者のためというと、別の官庁の出番になるのではないか」(能力評価課)。金融庁の動きもない。野田さんは言う。「消費者も勉強して少しでも理論武装してほしい。そうすればFPも危機感を持ち、変わってくると思う」
◇
参考情報 「ファイナンシャルプランナー」という肩書は一般的な名称で、極端にいえば誰でも名乗ることができる。国家資格の「ファイナンシャル・プランニング技能士」は資格がないと名乗ることはできないもので、名称独占資格という。ちなみに弁護士や公認会計士は資格をもたないとその仕事ができない業務独占資格だ。
*****************************************************



↑クリックお願いします!
スポンサーサイト
- 2011/03/25(金) 00:00:09|
- 資格
-
| トラックバック:0
-