前回に引き続き、交通事故発生状況について考察します。
前回示した資料及び他の統計資料も参照すると、最近の15年間の交通事故状況の推移は、以下のような結果です。
・H2年の事故発生件数を1とするとH17年は1.45
・H2年の負傷者数を1とするとH17年は1.46
・H2年の死者数を1とするとH17年は0.61
・H2年の自動車保有台数を1とするとH17年は1.28
一般に、報道では事故死者数が、減少していることを大きく取り上げるので、交通事故の状況は改善されているイメージを持たれている方が多いです。
しかしながら、だまされてはいけません。
この15年で、自動車保有台数の増加(1.28)以上に事故発生数(1.45)負傷者数(1.46)は増加しています。確かに、死者数だけは減っていますが、そもそも統計上の交通事故の死者とは、事故発生から24時間以内の死者のことを言います。救急医療体制や医療技術は年々進歩しますので、それによる減少も含みます。また、やはり死者が増加傾向にあったため、重大事故を減らすことを重点に、シートベルト義務化・飲酒運転厳罰化・危険運転致死罪・エアバッグ等・自動車の安全基準の強化…といった対策の成果により、いわゆる即死に至るような事故は減ったということでしょう。
でも、残念ながら述べたように、この15年間は、交通事故をめぐる状況は、大きく悪化しているのです。分かり易くいえば、諸々の対策により、
即死する人だけは減りましたが、事故数・負傷者数は、車の増加以上に増えているのです。 ちなみに、その前15年間と比較すると違いは、明らかです。
・S50年の事故発生件数を1とするとH2年は1.36
・S50年の負傷者数を1とするとH2年は1.26
・S50年の死者数を1とするとH2年は1.04
・S50年の自動車保有台数を1とするとH2年は2.07
S50~H2年の15年間には、自動車保有台数は2.07倍に増加したのに、事故件数は1.36倍・負傷者数は1.26倍・死者数は1.04倍にしか増えていないのです。
いかに近年の15年間の交通事故発生状況が、惨憺たるものか理解できるでしょう。
この15年間で、交通事故状況がこんなに悪くなったのにはいろんな要因はあるでしょう。
しかし、1990年代に入って、日米貿易摩擦や規制緩和の影響で、3ナンバー解禁・馬力自主規制の大幅な緩和など、交通事故増加につながると思われる規制が大幅に緩められたのがこの時期なのです。
この結果、小型車・普通車に占める普通車(3ナンバー)の比率は、80年代まではせいぜい
2~3%であったのに、2003年時点では
37.4%にまで激増しているのです。道路の幅員等は、幹線道路をのぞき、殆ど変っていないのですから、大排気量で車幅の大きい3ナンバー車の急激な増加が、事故数・事故率の増加に寄与していることは疑いが有りません。(この15年で、交通事故に寄与する要因で数字的にこんなに急激に変化しているのは珍しいですから。)
経済的規制緩和は、必要で進めるべきですが、このような国民の生命・安全にかかわる規制は、緩和すべきでなかったことが如実に明らかになっています。(自動車メーカーに干されるのが怖いので、マスコミも報道しない不都合な真実)
~続く~


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- 2007/03/22(木) 15:16:05|
- 社会・安全
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