<働き方改革で"長時間労働"が減らない理由 自由な裁量でも不自由な働き方> ジャーナリスト 溝上 憲文 PRESIDENT Online 2018.3.13
アベノミクスの成長戦略である労働改革の目玉として注目された裁量労働制の拡大と高度プロフェッショナル制度の創設は暗礁に乗り上げている。政府が主導する働き方改革では長時間労働がなくならない理由とは。
・裁量労働制で長時間労働はなくならない
日本の長時間労働をどのようにして変えていくのか。安倍政権は2つの対策を打ち出した。1つはこれまで法律上青天井だった労働時間に上限を設けること(罰則付き上限規制)。もう1つは自分の裁量で働く時間を決められ、出勤・退勤が自由にできる「裁量労働制」の拡大と「高度プロフェッショナル制度」の創設である。
政府は自由な働き方ができると労働時間も短くなり、子育てや介護に時間を割くことができるので仕事と家庭の両立が可能になると主張してきた。だが、出勤・退勤が自由にできる制度はすでにある。フレックスタイム制を導入している企業は少なくないが、1カ月合計の所定労働時間を満たせば、何時に出社し、退社しようがかまわない仕組みである。
では、裁量労働制とどこが違うのか。出勤・退勤の自由は同じだが、その違いは所定労働時間をクリアする必要がないこと、もう1つは残業代が出ないことだ。フレックスタイム制は1カ月の所定労働時間を超えた分は残業代として支払わなければならない。それに対して裁量労働制は労使が1日のみなし労働時間を9時間と決めれば、法定労働時間の8時間を超える1時間分の残業時間に相当する手当は出るが、9時間を超えて働いても残業代が出ない。
ただし、夜10時以降の深夜労働や休日に労働した場合は残業代を支払う必要がある。さらに「高度プロフェッショナル制度」(高プロ制度)とは、この深夜労働や休日労働の残業代も支払う必要もなく、法律に定めている休憩・休息時間も付与する必要もない。こうした残業代も出ない労働時間規制の適用除外をアメリカではホワイトカラー・エグゼンプションと呼ぶ。
しかも対象になるのは管理職以外の社員である。管理職は法律上、自己裁量権を持つ存在と見なされているからだ(深夜労働の残業代は支給)。
裁量労働制には専門業務型裁量労働制(専門型)と企画業務型裁量労働制(企画型)の2種類があり、専門型の適用労働者は約80万人、企画型は約30万人とされている。企画型は「企画・立案・調査・分析」業務に限定されているので、政府は新たに法人営業職などに拡大しようとしていた。
残業代が出る、出ないはさておき、出勤・退勤の自由があり、フレックスタイムと違って所定労働時間分働く必要がなく、少ない労働時間でも許されるとすれば、政府が言うように長時間労働は減るかもしれない。
だが、それはまさに幻想にすぎなかった。実態は労働時間が短くなることはなかったのである。
・「高プロ制度」も労働時間は減らせない
安倍首相が国会答弁(1月29日)で「厚労省の調査によれば裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般的労働者より短いというデータもある」と発言した。だが、その元となる調査自体が客観性を欠く不適切なデータであることか判明。他にも「短くなる」というデータは存在しなかった。
逆に、厚労省の外郭団体である独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査(2014年6月)では、一般労働者よりも裁量労働制の適用労働者の労働時間が長いという調査結果が出ていた。
結局、安倍首相は働き方改革関連法案から裁量労働制の対象拡大を削除し、今国会での提出を断念することになった。
安倍首相の発言や一連の経緯を企業の人事担当者はどう見ているのか。裁量労働制を導入している大手IT企業の人事担当者はこう語る。
「安倍首相の発言を報道で知ったときは、何をバカなことを言っているんだと思いました。当社でも係長クラスに裁量労働制を導入していますが、ほとんどが以前よりも遅くまで会社に残って仕事をしています。もちろん中には定時に帰る社員もいますが、ごく少数です。当社に限らず、裁量労働を入れると労働時間が長くなるのは人事関係者の間では常識です」
安倍政権は今後改めて実態調査を実施して、来年以降の国会に裁量労働制拡大の法案を出し直そうとしている。だが、調査をしても「裁量労働制で働く人が普通の労働者より労働時間が短い」という結果が出てくることはあり得ないだろう。
今回の結末で明らかになったのは、裁量労働制の拡大が「日本の長時間労働を減らす」という本来の目的にそぐわない政策だったことである。それに照らせば新たに創設される「高プロ制度」も同様に労働時間が短くなることはないはずである。
その前提が崩れているにもかかわらず政府は高プロ制度の法案を今国会で成立させようとしている。この制度は高度の専門職であること、年収が「平均給与額の3倍を相当程度上回る」という条件がついている。具体的には年収1075万円以上の労働者だ。政府は条件が限定されているし、会社側と交渉力のある労働者にしか適用しないと説明している。
「交渉力のある労働者」とは、「この条件は飲めないので会社を辞めて他社に行きます」と言えるぐらいのバーゲニングパワーを持つ社員のことだ。果たしてそんな社員がどのくらいいるだろうか。大企業には課長でなくとも1000万円以上の年収を得ている社員が結構いる。部下のいない「名ばかり管理職」でも年功賃金で課長より年収が高い社員もいれば、係長クラスでも残業代込みで1000万円を超えている社員もいる。
交渉力のある人とは思えないが、その担保として法案要綱では「本人同意」を義務づけている。しかし、本人同意は現行の裁量労働制でも必要とされている。
・「高プロ制度」導入にこだわる理由
だが、本人同意があっても実態は裁量権のない働き方を強いられている。先に紹介した労働政策研究・研修機構の裁量労働制の調査によると、日々の出勤・退勤において「一律の出退勤時刻がある」と答えたのは専門型の社員が42.6%、企画型が49.0%の割合を占めている。半数近くの人の会社が出退勤時刻で縛っている。しかも、専門型・企画型の社員の40%超が遅刻した場合は「上司に口頭で注意される」と答えているのだ。
要するに「自由な裁量」を謳いながらも「不自由な働き方」をしている人が少なくないのである。高プロ制度を導入しても、政府が言うような「自律的で創造的な働き方」ができるだろうか。
にもかかわらず高プロ制度の導入になぜ固執するのはなぜか。それは日本にホワイトカラー・エグゼンプションを導入することが経済界の長年の悲願だったからだ。経団連は制度の導入を長年主張し続けてきたが、裁量労働制はホワイトカラー・エグゼンプションの中間形態として、経済界の要望で実現したものだ。だが本丸が高プロ制度の実現だ。
第1次安倍政権下の2007年に導入が予定されていたが、世間から「残業代ゼロ法案」との批判を浴び、廃案になった。だが、第2次安倍政権下で今度はアベノミクスの成長戦略の労働改革の目玉として、装いを変えて再浮上し、今回の高プロ制度につながっている。
もちろん人事関係者の間でも高プロ制度を歓迎する声もある。大手自動車関連メーカーの人事担当者は本音をこう語る。
「社員の中には時間を気にしないで思う存分働きたいという人もいます。スキルアップしたい、キャリアを積みたい人にとっては残業規制で会社を閉め出されても外や自宅で仕事や勉強をしているはずです。会社としても技術開発に携わる専門職には労働時間に関係なくマイペースで働いてもらいたいという思いもある。制度が導入されると今回の労働時間の上限規制も適用されませんが、もちろん会社として健康管理には十分に注意していくつもりです」
時間を気にしないで思う存分働きたい、あるいは働かせたいという気持ちもわかる。だが、その思いと今回の「長時間労働の削減」という政府の法案提出の趣旨とは明らかに異なる。にもかかわらず政府は「働き方改革関連法案」という一本化した法案として国会に提出しようとしている。これは安保法制のときのようにいくつもの法律を抱き合わせて出すことで国会成立を容易にしようとする手法と同じである。
高プロ制度が長時間労働の削減につながるという立て付けが崩れた以上、他の法案と切り離して議論するのが筋だろう。
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「働き方改革」・・・って、所詮政治屋さんやマスコミ・官僚のピント外れな、為にする検討です。
そもそも「三六協定」さえ結んでいないことの方が普通である中小企業や「三六協定」は結んでいても労基法を守らない大企業だらけなのに、ロクに取締りもしないで放っておいて、挙句に 「働き方改革」ですから・・・
「働き方改革」とか言葉遊びは止めて、素直に「労基法違反」といった方が良いでしょうね!
正確な統計は存在しないのでしょうが・・・
中堅・中小企業で「36協定」をちゃんと提出している企業がどれだけあることか。
相当甘く見ても、過半数は届け出ていないというのが実態でしょう。
そして「36協定」を届出ている企業でも・・・労基法に定められていて届出しないと「残業させること自体が労基法違反となる」ことをかろうじて理解しているから、形式的に届出している企業が大半でしょう。
つまり大企業は別にして、「36協定」などというもの自体が、事実上機能していないのが実態です。
もし、この記事のいうように本当に「36協定」が無制限残業の温床であるなら・・・
「36協定」を締結していない大多数の中小企業は、労基法を守って「8時間労働」を守っていなければなりません。
当然そんなことはありません。
少なくとも「36協定」を提出している企業の方が多少なりとも労基法を気にしているだけ労働環境は良いでしょう。
無制限残業の温床は、そもそも「36協定」を届出せずに、労基法に違反して残業させている企業さえほとんど取り締まることもないというような「労働行政の怠慢」にあるのです。
「36協定」が無制限残業の温床などというのは、「論点の矮小化」「労働官僚の責任逃れ」に過ぎません。
<労基法違反がなくならないホントのワケ!> そもそも日本の労働環境について~
「文化的な背景が・・・」
「労働運動の歴史が・・・」
「労働観が・・・社会が・・・」
~等々、いろいろ小難しい事を言う評論家などが多いですが・・・
このような状態を改善するのは、本当は簡単です。
なにせ根本原因は、一つだからです。
根本原因は、「労基法違反を放置する」日本の労働行政の怠慢につきます。(そのウラに、“経団連と政治屋の意図”と“労働基準監督署職員のやる気の無さ”の相乗効果があると思っています。)
労働基準法という(浮世離れしたと言えるほど…)厳しい法令があるのに、その違反の取締りを全くといって良いほどやらない。
→ 労基法は、守らないのが普通でなんら実効性の無い、ただの“絵に描いたモチ”になってしまっています。
少し前になりますが、“名ばかり管理職”が社会問題化しました。
この問題も“労基法違反”なんてことは、会社側は、先刻承知の上でしたが・・・
誰にも問題にされないし、いわんや取り締まられることなど殆どありませんでした。
(裁判を起こされてようやく論点とされる程度でした。)
そこで、賃金コスト削減の為に、多くの会社で当り前のように、法違反してきました。
正直、ワルのりした社労士等の人事コンサル連中など“残業代節約法”などと称して「社員を(名目上)管理職にすれば残業代削減できまーす!」なんて教示していたものです。
(今でも似たような連中は、一杯いますが・・・)
しかし、いよいよ“名ばかり管理職”社会問題化し、マスコミに取り上げられたり、マズイことになりそうになると、「コリャいかん!」ということで、マクドナルドのように率先して運用をやめるところも現れました。
→ この対応自体が、企業が以前から労基法違反を認識していたことを、自分で証明してるようなものです。
近年では、社会の関心も集まり、長時間労働や賃金不払い残業の摘発を、労働基準監督署も従来よりは、力を入れて行なうようになりました。
しかしながら、まだまだ一部の企業を“一罰百戒的に”摘発しているのがいいところで、全然取り締まり不足というのが実態です。(摘発されるのは氷山の一角!)
警察の速度違反の「ネズミ捕り」みたいに、労働基準監督署にも、過大なノルマでもかけて取締りをさせることが必要でしょう。
そして、せめて3年に1回くらいは、全事業所に取締り(調査)を行なう位の頻度が必要でしょう。
労働基準監督署が何十年にもわたり、一度も取締りに来ない・・・などという事実上、労基法違反放置状態では、そりゃ悪徳社長じゃなくても、労基法など守らなくなりますよ。
「圧倒的に弱い立場の労働者が、わざわざ申告でもしない限り、労基法違反の取り締まりに出かけない。」・・・取締り当局が、こんなスタンスでは、労基法違反など無くなるわけが有りません!
労基法のような法律の違反こそ、当局が積極的に摘発に向かうスタンスでなければいけません。
現状では、正直言って、「36協定」(これを締結しないと本来、残業させることすら違法!)すら締結していない中小企業のほうが、多数派でしょう。
「賃金不払いが・・・、サービス残業が・・・」とかいう以前に、そもそも残業をさせていること自体が、既に違法な企業だらけなのです。
こんな違法状態を、放っておくということ自体が異常です。
このような基本的な法違反を、十年一日の如く、いつまでも放置している労働基準監督署による労働行政など、事実上破綻していると言えるのではないでしょうか。
一方では、こんな最低限の法(労基法)すら守られていないこと看過しておいて・・・
制度立案の担当部門のお役人は、
「育児・介護休業法が・・・、イクメンが・・・」
「定年の引き上げが・・・。」
「雇用機会均等が・・・」
~と、ドンドン大企業か公務員位しか実現できない様な法律に執心して、整備にいそしむ・・・。
浮世離れし過ぎでしょう!
まずは、基本中の基本の「労基法違法の放置状態」を無くすことが先決でしょう。
こんな労働行政は、まさに基礎の無いところに立派な建物を構築しようとする「砂上の楼閣」そのものです!
法など作っても、その実効性が担保されないのであれば、ほとんど無意味でしょう。
※当面の打開策:労基法違反も警察の管轄へ! 私は、「労基法違反は、労働基準監督署!」という形式をやめにして、是非とも労基法違反を、警察でも管轄すべきだと思いますね。
大体、「労働基準監督署」なんて、一般の人間には、どこにあるのか分かりにくいし・・・
ようやく探して行ってみても、やる気のないサンダル履いた中高年職員が、イヤイヤ応対に出てくる。
それだけでゲンナリ…。
まあ皆さんも一度行ってみたら、わかりますよ!!
ブラック企業に残業させられまくって過労死しそうな社員が、あんなところへ、ノコノコ行けるわけない!
せっかく労働者が「意を決して」行ったとしても、チンタラ仕事が遅く「あーだの、こーだの」と腰が重いので、話になりません。
とりあえず、警察なら至る所にありますし、違反現場(会社)にパトカーで、制服警官が来てくれれば、鬼に金棒!
パトカーがくれば、ご近所では人だかりが、できるかもしれません。
「この会社で何があったの??」・・・ヒソヒソ白い目で見られます。
こういうことが意外と経営者に心理的に効くんですよ!
警官が来るだけでも、悪徳社長も、かなりビックリしますよ。
そして、“36協定締結してない。”“就業規則が必要な企業なのに作成してない。”・・・といった基本的な「労基法違反」をどんどん摘発すれば、悪徳社長も「コリャたまらん」と認識改めざるを得なくなります。
そうなれば、社会の労基法違反に対する認識もガラリと変り、現在の労基法違反状況も飛躍的に改善し、勤労者の生活もずいぶん改善されるでしょう。
(コラム) 法律家も無視する日本の労働法形骸化の悲惨さ! 自らを“法の番人”とか“法律家”とか呼んでいる「弁護士」や「司法書士・税理士・公認会計士」…。
しかしながら、弁護士事務所や税理士事務所など99%は、労基法違反の巣窟といっても過言ではない。
36協定提出していたり、残業代をちゃんと払っている事務所などあまり聞いたことがありません。
ごくごく少数の労働派弁護士以外は、法律家自らが、そもそも「労働法違反者」なのです。
いかに日本の労働環境が酷いものであるかを現している事実です。
こんな実態ですから、たとえ長時間労働に悩む労働者が、「残業代が…。長時間労働が・・・。」とか相談しても、“労基法違反”弁護士は、心の中では「なに甘い事言ってんだ。ウチの事務所も同じだよ…。」とか思っているに違いないワケ。
やっぱり日本の労働者を救えるのは、「警察の介入」だと思いますね。
※変化の兆しも!ただし、「過払い金返還訴訟ブーム」が終息に向かいつつある現在、新司法試験で弁護士数も増え、食い扶持に困っている弁護士業界では、今後の稼ぎ頭として「不払い残業訴訟ブーム」を仕立て上げようとしているという観測もありますので・・・
その成否次第では、弁護士による不払い残業代訴訟が飛躍的に増えれば、労基法違反のあり方に、大きな変容を見せるかもしれません。
(追記) 「社会保険」も同じ構図! 述べてきたように労働法令は、法令自体は、素晴らしい労働環境を目指して整備されています。
しかしながら、少なくとも大半の中小企業では、法令は全く守られていないのが実態です。
この状況は、社会保に関しても同じ構図であり、大半の企業にとって「強制加入」である社会保険(健保・厚生年金)ですが・・・事業主が加入しなくても、役所は我関せずに近い状態です。
まるで「任意加入」かのような状況ですからね。
いまだに「社会保険完備!!」なんていうフレーズが、求人の目玉になりますから・・・
「社保完備」じゃない=違法なんだから、指導・摘発しなければ本来おかしいはずでしょう。
社保加入しない悪徳事業主が義務も果たさずマル儲けなのをほったらかしの役人のやる気のなさよ・・・
「パート・アルバイト」の社会保険など何をかいわんや。
「加入基準に達しているから社保に加入させて下さい」とお願いして入れてくれる事業主は「優しい事業主様」状態です。
本来は、当然のことをしているだけなのですが・・・
こんな加入状況を放置しておいて、「社保の加入基準引き下げ」を目指したところで、ザルで水を汲んでいるようなもの!
兎にも角にも現行の加入基準でまず100%の加入を実現するべきでしょう。



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- 2018/04/21(土) 00:00:42|
- 社会・安全
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