<労働者派遣法改正案 これほどあからさまな企業側法案見たことない―共産・小池氏> 2015年9月9日財経新聞
安保法案と共に今国会での最重要法案のひとつとして政府が位置付ける労働者派遣法の改正案。9日の参院本会議で自民、公明、次世代などの賛成多数で可決し、衆院に送られたが、本会議では、賛成、反対ともに討論者が熱弁になった。
反対討論では日本共産党の小池晃議員は「これほどあからさまに企業側の要求に応える法案を、わたしはかつて見たことがない。この法案は派遣労働者保護法でなく、派遣企業保護法であることを露骨に示すもの」と断言して、廃案しかないと訴えた。
民主党の石橋通宏議員は「派遣制度のあるべき姿を根底から覆す大改悪であり、断固反対。労働者の犠牲の上に我が国の発展はない」と訴えた。
また石橋議員は「準備と周知時間を考えれば(9月30日の)円滑な施行は不可能」と指摘。「かつて、ここまで労働者を救済直前に裏切って、ブラック企業を救済する悪法があったか。与党自ら修正案を出さざるを得ず、39項目に及ぶ付帯決議が採択されたことからも、この法案が欠陥だらけということだ」と真っ向から廃案にすべきと主張した。
加えて、法案の問題点について(1)派遣の期間制限を事実上撤廃する。(2)派遣の自由化に道を開き、正社員から派遣への置き換え、派遣の固定化を招く。(3)業界による業界利益のための法案で、雇用安定化措置は抜け穴だらけ。法案には派遣の正社員化などどこにも法定されていない。(4)法案では派遣労働者の賃金アップ、処遇改善も実現されない(5)派遣労働者の権利強化の条文はどこにもないとした。
一方、自民と公明を代表して、賛成討論を行った自民党の福岡資麿議員は「労働者派遣制度は働く人にとって自由度が高く、柔軟な働き方を可能にする制度だ」とし「派遣先企業にとって専門性にある労働者を臨機応変に活用できる長所がある」とした。
福岡議員は「労働力の需給調整に大きな役割を果たしている」とまさに経営サイドでのメリットの大きさを浮き彫りにした。
福岡議員は「派遣労働者の保護、雇用の安定強化が目的」と改正の目的が派遣労働者の視点にあるとし「法案は派遣労働者の待遇改善に資するもの。個人単位で3年という派遣期間制限を設けたうえで、上限に達した派遣社員が希望した場合には派遣先企業への直接雇用を依頼、新たな就業機会の提供、派遣会社自身での無期雇用など雇用継続のための措置が派遣会社に義務付けられ、義務違反の派遣会社には許可取り消しなどの措置もとられる」と主張。
また「派遣先企業従業員との均等待遇に考慮し、賃金を決定し、福利厚生を実施する配慮義務がすでに課されているが、今回の法案では、考慮した内容を派遣社員の求めに応じて説明する義務が課される。均等を考慮する配慮義務がこれまで以上にはたされることが期待される」。
「派遣社員のキャリアアップの為、派遣会社に計画的教育訓練や希望者にキャリアコンサルティングを行う義務が課される」などとした。しかし、派遣先企業が社員に行う教育訓練や社員食堂などの使用に対しては配慮義務にとどまるなど企業裁量でどうにでもなる規定になっている。(編集担当:森高龍二)
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戦後、それまで「口入れ屋」「周旋屋」によって不当な中間搾取をされ、悲惨な労働環境に置かれていた日本の労働者は、「間接雇用」を禁止し、周旋屋を許さない労働法制により権利を守られてきました。
しかし、労働者派遣法は制定以来、順次その規制を緩和され、現在でも、現代版の周旋屋「人材派遣業」はフリーハンドでやりたい放題。ワーキングプア・貧富の格差の根幹はここにあります。
いよいよ今回の改正で、派遣法(現代版「口入れ屋・周旋屋」法)の改悪も「完了」といっても良い出来栄えです。
ところで、派遣・非正規雇用問題について語る時、「小泉改革がいけなかった…」などという評論家・コメンテーターが多いですが・・・非常に表面的な薄っぺらな見解に過ぎません。
経団連は、上手に小泉改革を使った上に、自分たちが表舞台に出て目立つことが避けられた結果表面上「小泉改革がいけなかった」ように見えているに過ぎません。
現在の派遣・非正規雇用問題の根源には、第二次大戦敗戦以来の、もっと根深い経団連の宿願達成への長期的な戦略が潜んでいます。
<*経団連の宿願の発生> 戦前の劣悪な労働条件・搾取的雇用慣行を抜本的に改善する為に、戦後になって労基法をはじめとする労働関連法の整備が行われました。
そして、逆に言えば「経営者」にとっては、
「戦前の“手配師・周旋屋”を復活し、経営者に有利で便利な雇用慣行をもう一度実現すること」
が宿願となりました。
戦後早々に発足した経団連にとって、大きな宿願の一つでありました。
それでも戦後は、長期的に右肩上がりの経済成長が続いた上に、日本の労働者の年令も若く、給与水準も世界的に見れば低位の状態が続きましたので、戦後の雇用慣行に対して、経営者が異を唱えることの優先度は、高くはありませんでした。
しかし、高度成長期も終わり、時代が進むにつれ、日本の給与水準も世界的に遜色ない水準に至り・・・
宿願成就の優先度は高くなり、経団連も要所で雇用慣行の改革に向けた活動を打ち出すようになりました。
<*宿願成就への道> そして、ついに提言などの繰り返しによる世論操作・政界工作が実る時が来ます。
1980年代には「専門的な職種のみに限る」といった条件付ではありましたが、とうとう「派遣業」という名の“周旋屋・手配師”の復活にこぎつけました。
その後着実に既成事実を積み上げていきました。
そして、経団連の宿願成就は最終段階に入ります。
<*宿願成就>バブル崩壊からの浮揚を目指す小泉改革の“構造改革”が始まると、早速経団連は「日本的雇用慣行の改革」を提起しました。
確かに戦後の右肩上がりを前提とした雇用慣行・人事制度等を改革することは、合理性も十分有りましたから…。
そこで、体よくその改革項目の中に滑り込ませた“派遣”の原則自由化による「“手配師・周旋屋”の事実上の完全復活」という経団連の宿願も、その本当の意図が理解されないまま、採用されてしまいました。
そして、ついに戦後一貫して経団連(経営者)が宿願としてきた現代版の“手配師・周旋屋”=“派遣業”の復活が成就しました。
現在のワーキングプアに至るまでの長期にわたる経団連の戦略的な道程であることをご理解いただけたでしょうか!
さすが経営者だけあって長期的視野に立ち、執拗に自分たちのビジョンを実現する突破力には感嘆しますね。
<*宿願成就の陰の立役者> 経団連の宿願成就の一端を担ったとも言えるのは、実は仇のハズの日本の「労組」です。
経団連の長期にわたる戦略的な宿願達成をみるにつけ、日本の「労組」の無能ぶりが浮き彫りになります。
敗戦という多大な犠牲を払って得たせっかくの労働者の権利・有利な雇用慣行。
日本の労組は、御用組合に徹し、経営者に迎合し、お祭り“春闘”ぐらいしか活動してこなかったといえます。
非正規雇用・派遣問題に関しても、正規雇用中心の労組様は、当初マトモに取り上げませんでした。
それどころか正規雇用者を守る為、率先して派遣・非正規雇用を批判するだけの態度でしたから…。
ようやく最近になって、少しは非正規雇用者の組織化などに取り組みを見せていますが、時既に遅い!
少なくとも経団連が宿願を果たし始めた1980年代から、経団連に対峙して派遣法の成立は、潰すべきでした。
チョットでも労働法規かじった者なら、「間接雇用の禁止」が労働者保護にとって、どれほど重要な規定か知らないことは無かったはずです。
形式上「派遣」は間接雇用でないことになっていますが、事実上、間接雇用と同じ事で、現代版「口入れ屋・周旋屋」であることは、明白だったのですから・・・
いわんや2000年代における“派遣の原則自由化”など、ストをしてでも止めるべきでしたね。
これじゃ、労働組合の組織率など下がるわけだ。
労働貴族化して、何の役にも立たない労組など、加入するだけ組合費とられて損ですからね!
(注)ここでいう“経団連”とは、厳密に経団連加入企業だけを指すというより・・・広く「経営者の総意を示す団体」の代表例・象徴として使用しています。



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- 2015/10/20(火) 00:00:54|
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