<ブラック企業を脱却できるか?~「『すき家』の労働環境改善に関する第三者委員会」の調査報告書を読んで> 2014年8月1日 Yahooニュース 佐々木亮 | 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表
はじめに
ゼンショーホールディングス(以下「ゼンショー」)に宛てた「『すき家』の労働環境改善に関する第三者委員会」の調査報告書(平成26年7月31日付)を読んだ感想としては、まず、形式だけの調査ではなく、それなりに実態に踏み込んだ調査であるとの第一印象を受けた。
本来であれば、企業が労働基準法を守っていないことは恥ずべきところであるが、労基法を守っていないことを赤裸々に記載しているところに第三者委員会の本気度は認めることができ、これを公表したゼンショーにも、その態度自体は、それなりに肯定的評価をすることはできる。
なお、批判的検討としては、次の記事が参考になる。
すき家の第三者委員会報告書雑感(渡辺輝人)
労働基準法違反の蔓延
報告内容についてであるが、目を覆うばかりの労基法違反が蔓延していることが明らかになった。
列記すると、
正社員にもクルー(アルバイト)にも発生している慢性的な長時間労働
常態化する36協定違反
15分単位で労働時間を切り捨てるという杜撰さ、それに伴う構造的なサービス残業
労時売上を強調するあまりに発生する恒常的・意図的なサービス残業
休憩時間がろくに取れない問題
休憩時間だとしながら休憩させていない問題
年少者の深夜労働
など、労基法などあってないかの如くのあり様である。
これに対し、労基署から多くの是正勧告がなされていたことも明らかにされており、ゼンショー側も労基法違反となっていることを把握し、何らの改善を行わなかったことが浮き彫りになっている。
このようなやり方で、ゼンショーが日本有数の大企業になったとすれば、その罪は途方もなく深いというべきである。これでは、法律を守る方が馬鹿を見るという、最悪の循環を生み出しかねない。いや、既に最悪の循環を生み出していたからこそ、「ブラック企業」問題が社会問題になったといえよう。
従業員の悲痛な叫び
具体的な従業員からの声は悲痛なものが多い。既に報道されているものも多数あるので、詳細は原典にあたってほしいので言及しないが、いかにゼンショーが、従業員の時間、払われるべき賃金、本来あるはずのプライベート、そして健康・・・これらを吸い取って、自らを太らせる養分にしてきたかが分かる。
ゼンショーはこれまでに多方面から「ブラック企業」と指摘されてきたが、その指摘の正しさが裏付けられたものといえるだろう。
本報告書は、『蟹工船』、『女工哀史』など、過酷な労働環境を描いたものがかつてもあったが、それに匹敵する過酷な労働環境を記載する文献として貴重なものだと言える。
ブラック企業を脱却できるか要注目
ゼンショーがこのような報告書を公表するに至った経緯は、現代の「逃散」とも言われた店舗閉鎖がきっかけである。このような事態を招くまで、多くの労働者、労働組合、市民からブラック企業であるとの批判を受けてきた。公表させたのは、これらの批判が実ったものといえる。
今後は、ゼンショーが労基法違反を是正できるかという点に、多くの市民の注目が集まるものと思われる。この報告書の内容を忘れることなく、国民的な監視が必要である。
なお、労基法は働くルールの最低基準である。これを守れていないことが、そもそも大問題なのである。これを守るということは至極当然なのであるから、これを成し遂げたとしてもゼンショーがいい企業になるのではなく、普通の企業になろうとしているに過ぎないということも、また忘れるべきではない。
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一部上場企業が率先して労基法違反・・・最近の経営者は「コンプライアンス/法令順守」なんてことを臆面もなく公言する時代ですが、こんな基本的な法すら守っていないのが日本の企業経営の現実で「コンプライアンス」などという言葉は、空虚に響きますね。
いろいろ小難しい事を言う評論家などが多いですが、このような状態を改善するのは、簡単です。
なにせ根本原因は、一つだからです。
根本原因は、労基法違反を放置する、日本の労働行政の怠慢です。
(そのウラに、“経団連と政治屋の意図”と“労働基準監督署職員のやる気の無さ”の相乗効果があると思っています。)
労働基準法という(浮世離れしたと言えるほど…)厳しい法令があるのに、その違反の取締りを全くといって良いほどやらない。
→ 労基法は、守らないのが普通で、ただの“絵に描いたモチ”になってしまっています。
少し前になりますが、“名ばかり管理職”が社会問題化しました。
この問題も“労基法違反”なんてことは、会社側は、先刻承知の上でしたが・・・
誰にも問題にされないし、いわんや取り締まられることなど殆どありませんでした。(裁判を起こされてようやく論点とされる程度でした。)
そこで、賃金コスト削減の為に、多くの会社で当り前のように、法違反してきました。
正直、ワルのりした社労士など“残業代節約法”などと称して「社員を管理職にすれば残業代削減できまーす!」なんて教示していたものです。
(今でも似たような連中は一杯いますが・・・)
しかし、いよいよ“名ばかり管理職”社会問題化し、マスコミに取り上げられたり、マズイことになりそうになると、「コリャいかん!」ということで、マクドナルドのように率先して運用をやめるところも現れました。
→ この対応自体が、企業が以前から労基法違反を認識していたことを、自分で証明してるようなものです。
近年では、社会の関心も集まり、長時間労働や賃金不払い残業の摘発を、労働基準監督署も従来よりは、かなり行なうようになりました。
しかしながら、まだまだ一部の企業を“一罰百戒的に”摘発しているのがいいところで、全然取り締まり不足というのが実態です。
警察の速度違反の「ネズミ捕り」みたいに、労働基準監督署にも、過大なノルマでもかけて取締りをさせることが必要でしょう。
そして、せめて3年に1回くらいは、全事業所に取締り(調査)を行なうべきでしょう。
監督署が何十年にもわたり、一度も取締りに来なければ、そりゃ誰も労基法など守らなくなりますよ。
「圧倒的に弱い立場の労働者が、わざわざ申告しない限り労基法違反の取り締まりに出かけない。」・・・こんなスタンスでは、労基法違反など無くなるわけが有りません!
労基法のような法律の違反こそ、当局が積極的に摘発に向かうスタンスでなければいけません。
現状では、正直言って、「36協定」(これを締結しないと本来、残業させることすら違法!)すら締結していない中小企業のほうが、多数派でしょう。
「賃金不払いが・・・、サービス残業が・・・」という以前に、残業をさせていること自体が、既に違法な企業だらけなのです。
こんな違法状態を、放っておくということ自体が異常です。
このような基本的な法違反を、十年一日の如く、いつまでも放置している労働基準監督署による労働行政など、事実上破綻していると言えるのではないでしょうか。
こんな最低限の法(労基法)すら守られていないこと看過しておいて、
「育児・介護休業法が・・・、イクメンが・・・」
「定年の引き上げが・・・。」
「雇用機会均等が・・・」
~と、ドンドン大企業か公務員しか整備できない様な法律に執心して、整備するお役人・・・。
浮世離れし過ぎでしょう!
まず、労基法違法を無くすことが先決でしょう。
こんな労働行政は、まさに基礎の無いところに建てようとする「砂上の楼閣」です!
法など作っても、その実効性が担保されないのであれば、ほとんど無意味でしょう。
※当面の打開策:労基法違反も警察の管轄へ! 私は、「労基法違反は、労働基準監督署!」という形式をやめにして、是非とも労基法違反を、警察でも扱うべきだと思いますね。
大体、「労働基準監督署」なんて、一般の人間には、どこにあるのか分かりにくいし・・・
ようやく探して行ってみても、やる気のないサンダル履いた中高年職員が、イヤイヤ応対に出てくる。
それだけでゲンナリ…。皆さんも一度行ってみたら、わかりますよ!!
ブラック企業に残業させられまくって過労死しそうな社員が、あんなところへ、ノコノコ行けるわけない!
せっかく労働者が「意を決して」行ったとしても、チンタラ仕事が遅く「あーだの、こーだの」と腰が重いので、話になりません。
とりあえず、警察なら至る所にありますし、違反現場(会社)にパトカーで、制服警官が来てくれれば、鬼に金棒!
パトカーがくれば、ご近所では人だかりが、できるかもしれません。
「この会社で何があったの??」・・・ヒソヒソ白い目で見られます。
こういうことが意外と経営者に心理的に効くんですよ!
警官が来るだけでも、悪徳社長も、かなりビックリしますよ。
そして、“36協定締結してない。”“就業規則が必要な企業なのに作成してない。”…といった労基法違反をどんどん摘発すれば、悪徳社長も「コリャたまらん」と認識改めざるを得なくなります。
そうなれば、社会の労基法違反に対する認識もガラリと変り、現在の労基法違反状況も飛躍的に改善し、勤労者の生活もずいぶん改善されるでしょう。
(コラム) 法律家も無視する日本の労働法形骸化の悲惨さ! 自らを“法の番人”とか“法律家”とか呼んでいる「弁護士」や「司法書士・税理士・公認会計士」…。
しかしながら、弁護士事務所や税理士事務所など99%は、労基法違反の巣窟といっても過言ではない。36協定提出していたり、残業代をちゃんと払っている事務所などあまり聞いたことがありません。
ごくごく少数の労働派弁護士以外は、法律家自らが労働法違反者なのです。
いかに日本の労働環境が酷いものであるかを現している事実です。
こんな実態ですから、たとえ長時間労働に悩む労働者が、「残業代が…。長時間労働が…。」とか相談しても、“労基法違反”弁護士は、心の中では「なに甘い事言ってんだ。ウチの事務所も同じだよ…。」とか思っているに違いないワケ。
やっぱり日本の労働者を救えるのは、「警察の介入」だと思いますね。
※変化の兆しも!ただし、「過払い金返還訴訟ブーム」が終息に向かいつつある現在、新司法試験で弁護士数も増え、食い扶持に困っている弁護士業界では、今後の稼ぎ頭として「不払い残業訴訟ブーム」を仕立て上げようとしているという観測もありますので・・・
その成否次第では、弁護士による不払い残業代訴訟が飛躍的に増えれば、労基法違反のあり方に、大きな変容を見せるかもしれません。
(追記) 「社会保険」も同じ構図! 述べてきたように労働法令は、法令自体は、素晴らしい労働環境を目指して整備されています。
しかしながら、少なくとも大半の中小企業では、法令は全く守られていないのが実態です。
この状況は、社会保に関しても同じ構図であり、大半の企業にとって「強制加入」である社会保険(健保・厚生年金)ですが・・・事業主が加入しなくても、役所は我関せずに近い状態です。
まるで「任意加入」かのような状況ですからね。
いまだに「社会保険完備!!」なんていうフレーズが、求人の目玉になりますから・・・
「社保完備」じゃない=違法なんだから、指導・摘発しなければ本来おかしいはずでしょう。
社保加入しない悪徳事業主が義務も果たさずマル儲けなのをほったらかしの役人のやる気のなさよ・・・
「パート・アルバイト」の社会保険など何をかいわんや。
「加入基準に達しているから社保に加入させて下さい」とお願いして入れてくれる事業主は「優しい事業主様」状態です。
本来は、当然のことをしているだけなのですが・・・
こんな加入状況を放置しておいて、「社保の加入基準引き下げ」を目指したところで、ザルで水を汲んでいるようなもの!
兎にも角にも現行の加入基準でまず100%の加入を実現するべきでしょう。



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- 2014/08/29(金) 00:00:27|
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